毎年、冬は積丹・幌武意でダイビングをしています。
ここのダイビングの楽しみの一つに、オニカジカの卵の成長を観察出来ることがあります。
毎年、同じエリアにオニカジカの卵(保護卵)が見られるので観察ポイントにしていたので
すが、あれ?
去年と同じ場所に産卵している?
今までは、「毎年同じエリアでも、少し離れた場所に産卵する」と思っていました。
帰宅して去年の写真と比べてみると、ピンポイントで全く同じ場所です。
もしやと思い、記録に残っている4年前の写真まで調べてみると、なんと4年間とも連続で
全く同じ場所です。
オニカジカの卵の産卵場所が比較できる写真を4年分並べてみます。
①2010~2011 年度 (写真01:2011/01/23 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

②2011~2012 年度 (写真02:2012/01/19 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

③2012~2013 年度 (写真03:2013/01/13 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

④2013~2014 年度 (写真04:2014/01/04 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

※1、①~③は、同じ場所に複数の(色の異なる)卵隗が見られますが、④の今年の写真
はまだ卵隗が1個です。
まだ早いのでしょうか?
※2、ほかの場所で見るオニカジカの卵は、こんな事例があるとは思わないので定点で
写した毎年の比較資料がありません。
もしかすると今回の例は特異であって、他のオニカジカが同様とは断定出来ません。
さらに写真を比較していて新たなことが分かりました。
それは、「毎年卵を保護しているオスが違う」ということです。
卵を保護しているオスは1匹で、卵が全部孵化するまで産卵場所の近傍を縄張りとして
移動しません。
そのため、卵が孵化し終わるまで同じオスの個体を卵の近くで観察することが出来ます。
卵を守っているオスの写真です。
①2010~2011 年度 (写真05:2011/01/23 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
交尾中の上が雄です。

②2011~2012 年度 (写真06:2012/01/19 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

③2012~2013 年度 (写真07:2013/01/13 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

④2013~2014 年度 (写真08:2014/01/04 撮影) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)

※3、ここでは、「成魚になったオニカジカの体色や模様は大きく変わらない」と考えてい
ますが、この前提が違うとオスの同定は難しいことになります。
※4、いずれの雄も2週以上に渡って観察されているので、産卵するためにやってきた
複数のメスと見間違ってはいないと思います。
※5、オスの生殖可能な期間が複数年あると仮定しています。
もし1年限りなら、毎年同じオスと考える必要はないですもんね。
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4年間の写真を見て分かったことは、
1、オニカジカの卵は、毎年同じ場所に産卵している。 → 事実
2、産卵した卵を守るオスは、毎年異なる。 → 事実
3、複数の(ステージが異なる/色が異なる)卵隗が見られるため、
異なる複数のメスが同じ場所に産卵している。
→ 状況より推定
ここからは、なぜ、どうして ? と考えていくのですが・・・
仮説①:この場所で孵化、又は以前にペアリングしたことのあるオニカジカが帰巣本能
(帰巣性)で帰ってきて、ペアリングして産卵する。
広い海の中を、どうやってこの場所に帰ってくるのか?
1)「鮭のように川の臭いを辿って帰ってくる」
→ 付近に川は無い。他にマーカーとなるものは?
2)「鳥のように太陽、星座、地磁気を利用して帰ってくる」
→海の中では不可能ですよね。
3)「地形を記憶している」
→そんなに頭いいかな?
もし帰巣本能でこの産卵場所の近くまで帰ってこられたとしても、そこからさらに
ピンポイントで同じ産卵場所をどうやって特定するのか?
仮説①はちょっと無理があります。
仮説②:オニカジカの産卵場所が特定の場所(特定の生物(カイメン等?)、鉱物等)の
上に限られ、たまたまその場所にしかなかったから。
でも、周りを見ても(人間の目では)特定の場所とは思えないのですが?
仮説②も無理かな?
仮説③:オニカジカは嗅覚が優れていて、前年の産卵場所に残っていた卵の臭いを嗅ぎ
付けたオニカジカが寄ってきてペアリングし、卵の臭いの残っている場所に産卵
する。
最初のペアのオスがその場所を縄張りとして卵を保護しながら残り、次にやってくる
新しいメスとペアリングして、新しいメスが同じ場所に産卵していく。
これなら、卵を守るオスが毎年異なるのも、複数の卵隗があるのも説明出来ます。
(かな?)
もし残っている臭いが卵自体の臭いではなく、孵化時のみに出る特定の臭いだと
したら、前年の卵が無事に孵化したことの証拠なので、オニカジカは安全な産卵
場所と認識して、再びその場所に産卵するのではないか?
それなら、数年に渡って同じ場所で産卵が続くのも説明出来ます。
臭いが1年も残る事については?
これは、産卵場所の下にあるカイメンの微細な孔に臭いのもとが吸着して保存され
るからでしょうか?
(臭いが残る為にはカイメンなどの上に産卵することが必要で岩肌では不可?)
思いついた仮説の中で、③は証明出来る裏付けが一切ありませんが、
ストーリーとしては説得力があるように思います。
なので、勝手に仮説③に決定 
※6、 今回は「毎年同じ場所に産卵する?」についての理由を考えてみたのですが、
「前年の産卵例がない初めての場所の場合はどうやって選定するのか?」 と
考えると、仮説②も重複している可能性もあります。
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4年間の写真記録から勝手に思いついたことを書きました。
本当のところはどうなんでしょうか?
※7、 今週のダイビング(1/19)は時化のため中止になりました。
なので、こんなこと考えてました 
