(海底地形図の一覧表)
速吸瀬戸の、3D海底地形図 (シリーズ17)
瀬戸内海シリーズの終わりは、速吸瀬戸。
ここは、瀬戸内海で一番深い所。 最大水深がなんと -465m
(瀬戸内海の平均水深は-31m)
※ 瀬戸内海のプロフィールは、ここです
1、速吸瀬戸の3D海底地形図
こんな海底地形をしています。
速吸瀬戸 3D海底地形図(広域) (図1)
3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
速吸瀬戸 3D海底地形図(狭域) (図2)
3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
海峡部を挟んで南北に深い海釜があります。
深い海釜が出来る原因はまだよく分かっていないそうです。
参考
「速吸瀬戸の海底地形、地質構造」
http://cais.gsi.go.jp/KAIHOU/report/kaihou20/05_02.pdf
速吸瀬戸 3D海底地形図(交差法)(図3)
1、3D海底地形図は、交差法で作られています。
立体視の苦手な方は、右(又は左)側の図だけを見て下さい。
2、3D海底地形図は、10秒ごとに30°回転します。
見たい角度で一時停止するとゆっくり見られます。
3、使用したデータ:
「日本海洋データセンター(JODC)の500mメッシュ水深データ」を使っています。
BGM:音楽素材『甘茶の音楽工房』「koisuruichigo」
2、速吸瀬戸を潮流によって出入りする海水の量?
速吸瀬戸から出入りする潮流の量(体積)がどのぐらいか疑問に思ったので計算して
みました。
※ ここから先の計算で求めた値はR1調べによるものなので、
「当たらずとも遠からず」ぐらいに見て下さい。
①速吸瀬戸の断面積を求める
断面積は、大分県大分市の関崎と愛媛県伊方町の佐田岬の先端を結ぶ直線下の
断面とする。
断面図は、(図4)に示します。
速吸瀬戸の断面図 (図4) 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
速吸瀬戸の断面積=1.221 Km^2
速吸瀬戸の断面図は、500mメッシュ水深データより作成した海底地形図から
求めています(R1調べ)
断面図は前後の地形を考慮した投影断面等が良いのでしょうが、難しいので岬間を
結ぶ直線下の地形の断面を使いました。
②速吸瀬戸を流れる潮流の速さと時間は、潮流推算(海上保安庁)2013/08/13 を使用。
潮流の速さと時間は、(図5)に示します。
速吸瀬戸の潮流の速さと時間 (図5) (左クリックで拡大)
出典:海上保安庁 潮流推算
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN6/2_kaisyo/tidal-current/tidalc_forecast2013.html
③速吸瀬戸に流れ込む(流れ出る)海水の量の計算
海水の体積=断面積*時間*潮流の速さの実効値(潮流の速さの最大値/sqrt(2))
で求めます。
速吸瀬戸の断面積=1.221 Km^2 (R1調べ)
流れ込む海水量=1.221(Km^2)*6.13(h)*3.0*1.852(Km/h)/1.4142=29.40 (Km^3)
流れ出る海水量=1.221(Km^2)*6.83(h)*2.9*1.852(Km/h)/1.4142=31.67 (Km^3)
※ 時間で変化する潮流の大きさを平均値ではなく、電気関係で使う実効値換算で
扱ったが明確な根拠はなく、なんとなく実効値のほうがよさそうかな?ぐらいです。
④瀬戸内海の容積に対する、速吸瀬戸から流れ込む(流れ出る)海水の割合
瀬戸内海の容積=8,815億m^3
流れ込む海水量の割合= 29.40/881.5*100=3.336 %
流れ出る海水量の割合= 31.67/881.5*100=3.592 %
問題です。瀬戸内海の海水が完全に置換されるのに必要な潮汐の回数は?
「ウナギのたれを継ぎ足しながら使うと、初めのたれが残っているのか?」
と同じ問題で、計算されている方がいたので式を借りて計算してみます。
置換される海水の量
60回の潮汐(30日)~87.8% が入れ替わる
360回の潮汐(半年)~99.99%が入れ替わる
ただし、瀬戸内海の海水が潮汐の度に完全に撹拌されるという条件が付きます。
実際は、瀬戸内海の真ん中まで太平洋の海水が直に流れているとは思えません。
もし完全に入れ替わるのに100年単位の年数が必要でも、瀬戸内海が今の形に
なったのは1万年以上も前。
古瀬戸内海時代の古い海水が残っているなんて無いですよね!
※ あと、直接降る雨水や川から流れ込む水もありますね。
⑤速吸瀬戸から流れ込む(流れ出る)海水による、瀬戸内海の水面上昇
(均等に満ちた場合を仮定して計算しています)
瀬戸内海の面積=23,203 Km^2
流れ込む海水による海面上昇=29.40/23203*1000=1.267 m
流れ出る海水による海面低下=31.67/23203*1000=1.365 m
注: ④、⑤は、東側の紀伊水道(友ケ島水道及び鳴門海峡)、西側の関門海峡
から出入りする潮流を含めないで求めた結果です。
これは、海峡の断面積を求めることができたのが速吸瀬戸だけだったためです。
ここから先は、精密な地形データが無料で使えるようになったときですね!
R1メモ
※ひまわり8号の画像で、瀬戸内海を流れる潮流が見えるか?を確認したブログです。
「ひまわり8号で紀伊水道に出入りする潮流を見る。」 2016年3月21日
「ひまわり8号で瀬戸内海の潮流が見えるのか」 2016年3月29日
3、R1が作っている、海底地形図の精度はどのくらい?
海底地形図を作るのに使っているデータは、JODCさんの「500mメッシュ水深データ」
です。
(無料で公開されていて、作った海底地形図をブログ等に使用できる、ありがたい
データです)
でも・・・
水深データの間隔が500m間隔の格子状なので、瀬戸内海全域などの広範囲の海底
地形図を作るには問題が無いのですが、海峡幅が14Kmの速吸瀬戸の場合、海峡長に
対するデータ数は
14Km/0.5Km=28 点
粗いですよね!
また、実際の最大水深は-465mですが、500mメッシュ水深データでは-404mで、
変化率の大きい水深部はサンプリングが粗いため水深誤差が大きいです。
生データで速吸瀬戸のような狭域の海底地形図を作ると、拡大した時にギザギザの
等深線になってしまいます。
今回、少しでも見栄えを良くするために、海底地形図(図1,2)を作るのに、
ちょっとごまかし(補間)をしてデータの水増しをしてみました。
でも、実際の海底地形図と誤差が大きければ無駄な努力なので、検証してみます。
参考に挙げた、「速吸瀬戸の海底地形、地質構造」に、速吸瀬戸の正確な等深線図が
有ります。
それと、500mメッシュ水深データから作った海底地形図を重ねてみます。
海底地形図の再現性(図6) (左クリックで拡大すると重ね合わせが見られます)
どうでしょうか? 趣味として見るには OK だと思うのですが?
************** 海底地形図について ****************
1、 作成した海底地形図は、私が趣味で作ったものです。データーの解釈間違い
や計算ミスなどで、海底地形図のデーターが正しいものとは限りません。
そのことを理解した上でご覧ください。
2、 作成した図の垂直:水平比(水深)は実際よりかなり誇張されています。
水深は、カラーチャートを参照ください。
3、 作成した海底地形図に使用した地形データー。
「日本海洋データセンター(JODC)」で公開している、「日本周辺海域の
水深データを500mの間隔でメッシュ化したデータ」を使わせて頂きました。
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