石狩湾の3D海底地形図 (海底地形図5)
石狩湾の3D海底地形図 (海底地形図5)
積丹半島近海の3D海底地形図を作った時、「石狩湾はなぜ遠浅なのか?」が
気になっていました。
そこで今回は、石狩湾を中心に3D海底地形図を作ってみました。
※「石狩湾は遠浅」~遠浅の定義がはっきりしないので、あくまで私の主観です。
1、石狩湾の海底地形 石狩湾はどのくらい遠浅?
まず、「石狩湾の3D海底地形図~等深線」を見てください。
(図1)石狩湾の海底地形図~等深線 (左クリックで拡大)
(図2)石狩湾の3D海底地形図~等深線 (左クリックで拡大)
なんと、海岸線から20Km離れても、水深が40mしかありません。
40Km先でも、約100mの水深です。
40mの水深は、レジャーダイビングで潜れる限界(無減圧潜水)と同じです。
潜る理由(?)があれば、可能なんです。(どこの許可が必要なんだろう?)
------ 追加記事 2013/10/07 -----------
陸地部分のデータが使えるようになったので、石狩平野の地形図を追加して作りました。
(図7) 石狩平野と石狩湾の、標高と水深 (左クリックで拡大)
(図8)石狩平野と石狩湾の、3D地形図+3D海底地形図
3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
-------------- 追加終わり ----------------------------
遠浅の水深で、大きな船は通れるんだろうか?
まず、港の深さは?
港の最大深さは、石狩湾新港-14m、小樽港-13mで、意外と浅い。
大型船の喫水(船の水の中の部分の深さ)は、イメージとして数10mくらいあるだろうと
思っていたのでこんな疑問を持ったのでしたが、意外でした。
港の水深で大型船が入っているので、遠浅の石狩湾でも問題ないようです。
ちなみに、船の喫水を調べてみると、船の満載喫水に対して、10%の余裕があれば
船は港に入れるようです。
水深の余裕を10%とすると、港に入れる船の最大喫水は 14m÷1.1=12.7m
一方、船の満載喫水は、55,000トン級貨物船 -12.8m、50,000トン級コンテナ船 -12.7m
なので、これ以上大きな船は入れません。
ちなみに、300,000トンタンカーの喫水は22.4mあります。
以外に、100,000トン級(324m)の旅客船は-8.1mで大きさの割に喫水は浅い、小樽港
でも楽勝です。
船の喫水はもっと深いと思っていたのでこんな心配をしましたが、遠浅の石狩湾でも
大丈夫でした。
※ついでに、スエズ運河:水深24mで、航行できる喫水は -20mまで
パナマ運河:航行できる喫水は -12mまで
海岸から約40Km先は大陸棚が終わり、急に700m~800mの石狩海盆まで落ち込
んでいます。
「石狩湾内外の海底地形」を、文章で説明すると(以下引用文)
『概観すると,最大約800mの石狩海盆が湾外前面にあり,そこから延びて湾ロに達し
湾口で水深約500mとなる湾外海底斜面と,石狩沖積層の末端をなす水深100~200mの
湾内海底斜面とが,湾口付近でぶつかり,そこに海底段丘を思わせる落差約400mの
急斜面が形成されている。この湾口急斜面は湾口中央よりやや積丹岬側で特に急勾配
を持ち,またそこには湾外海底が二条の深い谷となって台地状の湾内海底に刻み入って
いる。一方湾口北側の雄冬岬寄りでは,海底斜面の勾配は比較的ゆるやかとなり,特に
岬の前面では石狩海盆に向って,ほぼ一定の緩勾配を成して下っている。
湾外の海底も極めて起伏に富んでおり,特に積丹岬の前面には水深3200mの海底から
高さ約3100mの後志海山がそびえ立っているなど,複雑な地形が広がっている。』
「石狩湾の津波と副振動 高橋 將 北海道大学工学部研究報告第130号(昭和61年)」
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/41968/1/130_17-32.pdf
より引用させていただきました。
となります。 私には書けない・・・ 図で表すほうが簡単ですね! (と逃げます)
昭和61年には今のように個人でも簡単に3D海底地形図を作ることが出来る技術がな
かったので、手書きの図と文章で表現するのに苦労したんだと思います。
上の説明文で表現している海底地形が、下の3D海底地形図を見ると納得できます。
(図3)石狩湾の3D海底地形図 ~ 3D立体写真・交差法 (左クリックで拡大)
2、大変だー 北海道が壊れてた?
でも、どうしてこんな遠浅の海岸なんだろう?
さらに調べてみると、大~変!!
北海道は昔、二つに分かれていた!!
(図4)内陸まで海が入り込んでいた 海岸線の変化
『今から数10万年前、小樽から苫小牧にかけて海がありました。この当時、石狩川は
太平洋に流れていましたが、約4万年前に起こった巨大噴火で発生した火砕流により
海は埋め立てられて、石狩川は日本海に流路を変えました。
約6000年前には世界的に温暖化となり、海面が上昇しました。このため、勇払平野
には海が入り込み(縄文海進)ましたが、その後は海面が下がって陸地になりました。』
図4と上の説明文は
「国土交通省北海道開発局室蘭開発建設部 樽前山環境防災副読本(中学生版)」
http://www.mr.hkd.mlit.go.jp/ より引用させていただきました。
札幌も、10万年前は海の中。工事現場でクジラの化石でも見つからないでしょうか
6000年前は、今の石狩湾よりもっと奥まで「古石狩湾」が広がっていて、石狩川などの
堆積物で埋められて現在の海岸線になったそうです。
石狩湾が遠浅で平坦なのは、石狩川から流れてきた堆積物によって埋められたからです。
この経過の詳細「石狩浜のなりたち」は下記で見ることが出来ます。
※下記のようなイラストと説明を見ることが出来ます。(図5、縮小して引用)
石狩浜海浜植物保護センター
http://www.city.ishikari.hokkaido.jp/kaihinsyokubutu/newpage-nat-naritai.htm
3、石狩湾の埋没谷
もう一つ、おもしろい資料が見つかりました。
平坦な石狩湾の海底に、昔の谷が埋まっているというのです。
それは、埋没谷といって、昔(第四紀後期?~年代不明)陸地だったころに形成された
河谷で、その後の海面上昇で海面下に沈んだ地形です。
現在のなだらかな石狩湾の海底地形図と、埋没谷を重ね合わせてみます。
(図6)現在の石狩湾の海底地形と堆積物の下に隠れた埋没谷 (左クリックで拡大)
(図6)の中の「北海道石狩湾の埋没谷」は、「第四紀後期における日本列島周辺の
海水準変動 大嶋和雄」 より引用させていただきました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/100/6/100_6_967/_pdf
複雑な埋没谷が堆積物で綺麗に消えて、なだらかになっているのが解かります。
水深-100~200mの大陸棚からあふれ出した堆積物はその先の急な勾配を下って
今の石狩海盆に溜まり、底が平らになったのでしょうか?
これも、石狩湾の成り立ちが解かる資料でした。
でも、どれだけの量の堆積物が石狩川から流れ出したのでしょう?
「東京ドーム何杯分」なんて単位じゃないのは解かるが・・・
今回のブログを書いていて一番驚いたのは、
数10万年前に、北海道が二つに分断されていて、日本海と太平洋がつながっていた
************** 海底地形図について ****************
1、 作成した海底地形図は、私が趣味で作ったものです。データーの解釈間違い
や計算ミスなどで、海底地形図のデーターが正しいものとは限りません。
そのことを理解した上でご覧ください。
2、 作成した図の垂直:水平比(水深)は実際よりかなり誇張されています。
今回の「石狩湾の3D海底地形図」の最大水深は、石狩海盆で約800m です
3、 作成した海底地形図に使用した地形データー。
「日本海洋データセンター(JODC)」で公開している、「日本周辺海域の
水深データを500mの間隔でメッシュ化したデータ」を使わせて頂きました。
500mメッシュ水深データの範囲:北緯43~44度、東経140~142度。
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